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Rehavi and Shack(2013) #85

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gt510244 opened this issue Jul 28, 2021 · 7 comments
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Rehavi and Shack(2013) #85

gt510244 opened this issue Jul 28, 2021 · 7 comments
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literature 文献のレビュー関連

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@gt510244
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gt510244 commented Jul 28, 2021

Rehavi and Shack (2013).pdf
サーベイデータを使って申請コスト等を考慮した寄付の分析を行っているということで先行研究としてGillitzer and Skov (2018)に紹介されていたので、Working paperではありますが、まとめておきます。

Partial Reporting: An Example from Charitable Giving
Marit Rehavi and Daniel Shack
Working paper of University of British Columbia

@gt510244 gt510244 added the literature 文献のレビュー関連 label Jul 28, 2021
@gt510244
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概要

この研究は既存の多くの研究が課税申告のデータを用いて分析を行っているのとは異なり、寄付のサーベイデータと課税申告データを用いることで課税申告のデータで推計された効果の1/4程度が実際の寄付データを用いた推計とは異なってくることを明らかにした。また、この結果は確定申告のコストに加えて、寄付の申告コストがあると想定した場合のモデルと整合的な結果となった。

@gt510244
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Introduction

多くの国において課税時に寄付の控除が行われており、所得控除では限界税率がtのときに寄付額が所得から控除されることで寄付1単位あたり$1-t$の価格で寄付が行えるようになっている。
この寄付の控除の効果の推定には、確定申告のデータが用いられ、申告者に適用される限界税率と寄付の額を見ることで寄付の価格弾力性の推定が行われてきた。しかし、このようなデータは寄付を行った人ではなく、寄付の申告を行った人を対象としたデータであり、寄付の申告(額)と個人の所得・限界税率との相関が所得弾力性や価格弾力性の推定時の潜在的な交絡となっていることが考えられる。
例えば、高額所得者は寄付価格が低いことからより積極的に寄付申請を行うことが予想でき、これを考慮すると申請額を用いて寄付の価格弾力性を推定することは過大な価格弾力性の推定につながると考えられる。

しかしながら今までの課税の研究文脈は納税者の課税額最小化行動に焦点をあてて分析を行い、課税申告をするかしないかについて関心があまり払われてこなかった。
唯一の例外として、税還付が課税申告を増やすと示したPitt and Slemrod (1989)があるが、課税申告をするかしないかというコストに加え、それぞれの控除項目についてきちんと控除を申請するコスト(例えば住宅ローンへの課税控除の申請コスト)も存在するため、控除項目ごとでコストがそれぞれかかると考えられる。寄付申請のコストについては、限界税率による寄付価格に依存すると考えられ、本稿ではこのコストの存在により、確定申告データを用いて推計された寄付の価格弾力性が実際の弾力性よりも過大であるということを示す。

本稿の分析ではアメリカのPanel Study of Income Dynamics(PSID)のデータを用い、実際の弾力性が確定申告データをもちいた弾力性よりも20%程度低いことが明らかとなり、家族固定効果を用いても結果は頑健であった。
また、このギャップは寄付先のポートフォリオ等によって増加することがわかり、確定申告コストと寄付申告のコストのそれぞれを考えたモデルと整合的な結果を得ることができた。

@gt510244
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Existing Literature

寄付の価格弾力性のLiteratureをここではまとめた上で、寄付申告の際に寄付証明書の添付が義務化されたことを識別に利用したFack and Landais(2016)や課税申告時の課税最小化行動についてまとめたSaez, Slemrod and Giertz (2012)などを紹介している。

@gt510244
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gt510244 commented Jul 28, 2021

Itemizing Charitable Giving

ここでは寄付申告について簡単なモデルを考える。個人$i$が$n$という寄付先に寄付をした場合、寄付の合計金額は

$$ G_i=\sum_{n=1}^{N_i}g_{in} $$

と計算される。寄付先ごとに$c$という申告コストがかかるとすると、合理的な納税者が申告によって手にする寄付の補助額は

$$ R^I_i=\max[0, (\sum_{i=1}^{N_i}I(g_{in}\tau_i-c\ge 0)(g_{in}\tau_i-c)] $$

となる。そのため、税務当局が把握する寄付額は

$$ G_i^I= \sum_{i=1}^{N_i}I(g_{in}\tau_i-c\ge 0)g_{in} $$

となり、$G_i$とこれが一致するのは

$$ \min(g_{in})\tau_i-c\ge0 $$

のときのみとわかる。これが成り立つのは寄付額が十分大きく、限界税率が十分高いときのみとなるため、そうでない場合には申告された寄付額$G^I$と実際の寄付額$G$の乖離が見られることがわかる。
この際、限界税率は所得と連動しており、調整が難しいが、寄付額は納税者にとって即座に調整が可能であるので、申告するかしないかに関わる変数$g_{in},\tau_i,c$のうち、$g_{in}$が実際に申告するかしないかに大きく関わることとなる。

申告された寄付額$G^I$をもとにした弾力性の推定はこの閾値の下にある$g_{in}$がどれくらいかといった分布によって実際の寄付額$G$をもとにした弾力性と乖離することになる。

(後藤コメント)
ここの式は申請コストのIVの戦略にかなり有用だと思われる。具体的には以下のような理由がある。

  • この論文ではあまり考えられていないが、寄付額を増やすと寄付申告の相対的コストが下がり、寄付申告を行うことで寄付価格が下がるため、寄付申告と寄付額とは内生的な関係にあると思われる。
  • しかし、この論文ではあくまで実際の寄付額$G$は寄付申告の有無とかかわらず固定で寄付申告額$G^I$が寄付申告によって変動するという暗黙的な仮定を置いていると考えられる。
  • 実際には寄付申告がなされて寄付価格が下がることで追加的に寄付を行う誘因が働くため、実際の寄付額$G$は寄付申告と連動して変動しうる。つまり、個人の寄付行動が、申告の有無を決める$\min(g_{in})\tau_i-c$に影響し、また$\min(g_{in})\tau_i-c$に影響をうけるとわかる。
  • ここで本来みたいものは、申告の有無も含めて、寄付価格が個人の寄付行動にどう影響するかであるので、「申告の有無を決める$\min(g_{in})\tau_i-c$の差→個人の寄付行動」というパスを見る必要がある。これを見るには、外生要因で$\min(g_{in})\tau_i-c$の違う人たちの寄付行動をみることが必要である。
  • 我々の戦略は申告するかしないかに関わる変数$g_{in},\tau_i,c$のうち、この論文で固定されていると仮定されている申告コスト$c$が給与所得者と自営業者で異なることを利用する。これは外生要因であるため、寄付申告の閾値が人によって変化し、寄付申告行動の差が生まれるため、この寄付申告の寄付額への影響を正確に捉えることができる。

@gt510244
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Empirical Framework

Data

本稿では分析のデータとしてアメリカの個人のパネルデータであるThe Panel Study of Income Dynamics (PSID)をもちいる。
このデータは1969年から開始され、1999年に確定申告の情報、2001年以降に寄付の情報が付与された。

調査では寄付先のカテゴリーが尋ねられており、宗教、複合的目的組織(combined purpose organization)、文化、健康、教育、若者、貧困、環境、国際貢献、その他の分類で世帯主が覚えている範囲の寄付額を回答している。
これらの調査の詳細はWilhelm (2006)にまとめられているという。

Tax rates

寄付申告を行った個人に適用される寄付価格は$1-I\tau$である。
ここで用いられる限界税率$\tau$は個々人の所得をもとにTAXSIMをもちいて計算された。ただし、データ上、資本所得のデータが取得されていないので資本所得のデータについては省いて計算を行っている。
また、分析では通常の寄付価格とFirst dollar priceのそれぞれが計算されて用いられる。

@gt510244
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Collaborator Author

Estimation

分析では、以下のような推計を行うことが最終目的である。
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$G^$は個人の寄付の合計額、$\tau$は限界税率、$y$は課税後所得である。
しかしながら、実際に分析者が観察できるのはサーベイデータによる$G^S$や課税申告による$G^I$である。
このとき、サーベイデータと実際の寄付額との間に$G^S=f^SG^
$という関係があり、$f^S$が個人の寄付価格や所得と関係ないのであれば以下のような推定によって弾力性を求めることができる。

image

同じような議論は申告データによる$G^I$についても成り立ち、$G^I=f^IG^*$とすると、

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がいえる。しかし、この係数が実際の弾力性と一致するためには

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が成り立つ必要がある。他方でもし

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がいえるのであれば推定値にはバイアスがかかることとなる。もし、所得の高い人のほうがより寄付税制等に理解があるのであれば所得が高いほど申告割合が増えるため$C(f,y)>0$がいえ、もし所得の高い人のほうが寄付申告に価値を置かないのであれば所得が高いほど申告割合が減るため$C(f,y)<0$が成り立つ。

もし申告ベースとサーベイベースでの係数の差がなければ、推定値の差は単なる通常の誤差となる。
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Results

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(4),(5)式の分析結果は上記でまとめられている。
欄(1),(4)は確定申告者全員の推定値であり、(2),(5)はサーベイデータで寄付を行っていると答えた個人の推定値であり、(3),(6)がサーベイデータと申告データの両方で寄付を行っていると答えた個人の推定値である。
筆者たちは(3),(6)の結果がPreferred resultであるとしており、概ね20%程度の係数の差がみられるとしている。またこの差は調査対象者が増えるほど広がっていることがわかる。

このような結果は分析を固定効果パネル分析としても以下のように頑健である。そのため、この結果は課税証明を残したりすることについてのクロスセクションの違いを捉えたものではなく、サーベイデータと申告データの違いを捉えたものであると言える。

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既存研究よりも係数値が半減しているのは既存研究で指摘されていたようなIntertemporalな課税申告の調整の影響ではなく、申告の有無によることが大きいと思われると筆者は指摘している。
また、「寄付先が増えるほど寄付額が分散化し、相対的にも絶対的にも申請コストが増える」という仮説について、(3),(6)の欄を比べると、「寄付先の数が増えることが寄付額に与える影響」について申告ベースの係数のほうが小さくなっていることがわかる。これは申告ベースのデータでは、サーベイデータよりも寄付先を増やしたときの寄付額の申告が少なくなっているためであり、寄付先が増えるほど申請コストが増えたのだと解釈できる。

また、この分析では欄(3),(6)などではIntensive marginについて主に分析しているが、被説明変数の作成時に寄付額に1を足した数の対数をとっているので、欄(1),(4)などでは寄付を行っていない者も分析結果に含まれている。
そのため、Extensive Marginの影響を除くため、Angrist et al.(2006)の欠落したテストスコアの分析を参考に、分位点回帰を行う。
具体的に、分位点回帰とは被説明変数である寄付額の分布のt分位にある被説明変数を説明変数Xの線形の関数として表現するものであり、$\rho_{\theta}$は納税者が寄付の条件付き分布の中で$\theta$のパーセンタイルにいるときのウエイトである。(具体的な説明は末石, 2015などを見ること。)

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これによって、被説明変数の打ち切りがあっても、被説明変数の分位点での推定値を算出することができる。
ここでは40%分位点から90%分位点までの分析を行っており、概ねどの分位点でもサーベイデータによる分析のほうが係数が0.5ほど小さいことが見て取れる。

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分析結果は寄付の条件付き分布のうち納税者が$\theta$パーセンタイルにいるときの寄付価格が寄付に与える影響を見ており、寄付額が大きい人のほうが寄付価格の影響が高いということが係数から読み取れる。

@gt510244
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Collaborator Author

gt510244 commented Jul 28, 2021

感想

  • かなり面白い論文で、我々の研究関心にダイレクトに繋がる研究だと思われた。
  • 執筆された時期からみて寄付とIntertemporalな所得調整について大きな関心が払われたAuten et al.(2002, AER)やBakija and Heim (2011, NTJ)の影響をもろに受けており、Intertemporalな所得調整に関する記述が細部に見られ議論が若干ぼやけている印象があるが、骨子の部分は非常にしっかりしていると思われた。
  • もう一度書き直して投稿すればかなり良いJournalに載る気がするし、AuerbachやSlemrodなどのそれなりの研究者からコメントをもらっていることがわかるが、①Intertemporalな所得調整へ言及している割には配慮ができていないこと、②寄付額を増やすと寄付申告の相対的コストが下がり、寄付申告を行うことで寄付価格が下がるという寄付申告と寄付額との内生的な関係への配慮がないこと、③税率の変更という外生要因を使った識別を行っていないこと④寄付の申告コストに関するLiteratureがこの時点で十分になく、寄付の価格弾力性に関する論文として売出しを行った結果、既存の寄付の価格弾力性の論文を批判するような形で書かれたことから、Rejectされたのだと思われる。
  • 申請の有無に関する理論的な予想や申告データが持つバイアスによる予想される係数の(バイアスの)向きなどの議論はかなり参考となると思われるので、この論文を引用しながら言及をしたい。
  • また、Extensive Marginに関する配慮も分位点回帰を行うことでクリアしており、Almunia et al.(2020)のようにExtensive Marginについて0か1のダミーで処理するのではなくFack and Landais(2011)の方法でクリアをおこなっている。
  • 他方で、すべての記述をこの論文に依拠することはオリジナリティの欠如であると捉えられてしまう可能性が高い。
  • 投稿時にこの論文の筆者にRefereeが回る可能性が非常に高いと思われるため、このときに差異をきちんと説明し、なぜ分位点回帰ではなくAlmunia et al.(2020)流の0か1のダミーでExtensive Marginについての問題を処理したのかを簡潔でいいので説明する必要があると思われる。
  • この論文では税率変更による外生ショックを使用して分析が行えていないので、我々の研究ではそこを強調し、給与所得者と自営業者の寄付申告のコストの違いを使って寄付申告と寄付額の内生性をクリアした点を推すことが重要だと思われる。
  • また、寄付の弾力性の論文として売り出すと既存研究の批判を行うような形で論文を書くようになる可能性があるため、そうではなくて、寄付の申告コストに関する論文として論文を書いた上で、寄付の弾力性の文脈を補完するのだとしたほうがいいと思われる。

@KatoPachi KatoPachi pinned this issue Aug 11, 2021
Repository owner locked and limited conversation to collaborators Sep 3, 2021
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