Boost Random Libraryは、多数の擬似乱数生成器と分布のクラスを提供するライブラリである。Boost.Randomは、メルセンヌツイスターや線形合同法といった擬似乱数を生成するアルゴリズムと、整数一様分布やベルヌーイ分布といった値の分布のアルゴリズムを組み合わせて使用するという特徴を持つ。
以下は、メルセンヌツイスター法による乱数生成と、1から6までの値を一様分布する例である。
まず、非決定的な乱数生成器であるrandom_device
クラスを使用して、ランダムなシード値を生成する。これは、シード値がユーザーにばれると、その後に生成される乱数列が予測されてしまうためである。
メインで使用する乱数生成アルゴリズムとしては、擬似乱数生成器であるmt19937
クラスをデフォルトで使用する。これは32ビット版のメルセンヌ・ツイスターアルゴリズムである。
整数の範囲を等確率で分布させるために、uniform_int_distribution
クラスを使用する。
uniform_int_distribution
はコンストラクタで値の範囲を受け取り、その関数呼び出し演算子の引数としてエンジンを受け取ることにより、そのエンジンで指定された値の範囲の擬似乱数を生成する。
#include <iostream>
#include <boost/random.hpp>
#include <boost/random/random_device.hpp>
int main()
{
boost::random::random_device seed_gen;
boost::random::mt19937 gen(seed_gen);
boost::random::uniform_int_distribution<> dist(1, 6);
for (int i = 0; i < 10; ++i) {
int result = dist(gen);
std::cout << result << std::endl;
}
}
実行結果:
5
1
6
6
1
6
6
2
4
2
Boost.Randomのジェネレータでシードの再設定をするには、ジェネレータのseed()
メンバ関数を使用する。
この関数は、ジェネレータのコンセプトとして規定されているので、Boost.Randomの全てのジェネレータで同じように使用できる。
以下は、メルセンヌ・ツイスターの例:
#include <iostream>
#include <boost/random.hpp>
int main()
{
std::size_t seed = 0; // てきとうなシード
boost::random::mt19937 gen(seed);
for (int i = 0; i < 3; ++i) {
std::cout << gen() << std::endl;
}
std::cout << "--" << std::endl;
gen.seed(seed); // シードを再設定
for (int i = 0; i < 3; ++i) {
std::cout << gen() << std::endl;
}
}
出力:
2357136044
2546248239
3071714933
--
2357136044
2546248239
3071714933
シード再設定後に、同じ値が生成されているのがわかるだろう。
分布クラスを通しても同じ値が生成される:
#include <iostream>
#include <boost/random.hpp>
int main()
{
std::size_t seed = 0;
boost::random::mt19937 gen(seed);
boost::random::uniform_int_distribution<> dist(0, 10);
for (int i = 0; i < 3; ++i) {
std::cout << dist(gen) << std::endl;
}
std::cout << "--" << std::endl;
gen.seed(seed); // シードを再設定
for (int i = 0; i < 3; ++i) {
std::cout << dist(gen) << std::endl;
}
}
出力:
6
6
7
--
6
6
7
なお、シードを取得する機能はないので、シードの管理自体はユーザーが行う必要がある。